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リハビリ通信 つむぎ

[Vol.36]インタビュー企画|離島のリハビリ〈後編〉

リハビリ通信 つむぎ特別企画のインタビュー。
〈 前編 〉では、利島村で暮らす人の生活についてのお話しを伺いました。後編は、離島の医療・介護・福祉についてのお話しです。


住み慣れた場所で、いつまでも元気に暮らせるように

––– 利島の医療環境を教えてください。
利島には、病院がありません。診療所が1つあり、基本的に医師1名と看護師2名が診療にあたっています。あとは月に1回のペースで歯科、年に1回のペースで耳鼻咽喉科、眼科、整形外科の医師が来てくれます。
このタイミング以外で診察が必要になった場合は、本土や大島に行く必要があります。島から出るには交通手段が不便だったり、宿泊など費用がかかってしまいます。

––– 介護・福祉の面はどのような体制になっていますか。
介護環境もまだ不十分なところが多くありますが、環境を少しづつ整えており、地域包括支援センター、デイサービス、居宅介護支援事業所があります。
実は、デイサービスの整備を中心的に進めている利島村社会福祉協議会の三田さんは以前、平成医療福祉グループで働いていたんです。その後、約7年前に移住して、利島の福祉環境を変えてきました。人材としては、デイサービスに介護士が5名、ケアプランセンターにケアマネジャーが1名、役場に保健師が1名おり、お互い密に連携をとっています。
福祉用具は、横浜では業者さんが家に来て実際に適切なものを選択することが多いですが、利島ではそもそも福祉用具を扱う店が1件もないので、デイサービス内に福祉用具を保管し、要支援以上の要介護認定を受けて希望をする人に貸し出しをしています。そのほか、送迎サービスや買い物代行、ホームヘルプなどもしています。

––– デイサービスが島の福祉を支えているのですね。利島ではどのようなリハビリテーションをしていますか。
主にデイサービスを利用している方や診療所の外来を受診している患者さんに向けてリハビリテーションを提供しています。デイサービスでみんなで一緒にやることも、個別でリハビリテーションをすることもあります。デイサービスに来ることが難しい場合は、ご自宅に伺って行う訪問リハビリもしています。
個人でのリハビリテーションは、転倒・骨折による疼痛に対するリハビリ、在宅の車椅子―ベッドの移乗の介助指導、自宅の環境設定、運動習慣をつけるための歩行練習などをしています。
また、水曜日はデイサービスでイベントを行っており、ボッチャというスポーツをやったり、小学生と交流会をしながら七夕飾りをみんなでつくったり、さく百合という綺麗なお花を見に島内一周ドライブに行ったりしています。イベントは、基本的に介護士が持ち回りで企画していますが、先日、私も担当させていただくことができました。身体機能の維持も目的に体操やレクリエーションを行っています。楽しんでいただけるよう内容は毎回変更し、利用者同士でコミュニケーションがうまれるように工夫しています。

––– どのような背景でリハビリテーションを始める方が多いのでしょうか。
島には脳卒中などの病気が原因でリハビリテーションをしている方はいらっしゃらないですね。というのも、基本的に脳卒中になった場合は島での生活が難しく、島から出ることになるからです。
なので、今リハビリをしている方は、加齢により腰が曲がり腰痛がでている方、膝関節や股関節に痛みがある方、畑仕事や山仕事などで腕や肩に痛みがある方など、日常の生活からくる慢性的な痛みを抱える方が大半です。あとは、骨折など怪我をした方や体力が落ちてきたり、あるいは体力を維持するために運動する方もいらっしゃいます。

––– 病院で提供するリハビリテーションと何か違いはありますか。
病院では患者さんのことを病院の中でしか直接見れてないことが大きな違いだと思います。
病院では、入院前の状態や退院後の生活を考えつつ、「今の状態を良くする」ことが目的です。一方で、島では状態を良くすることはもちろんですが、「なるべく今の生活を維持できるようにする」という目的が大きくなります。利用できる介護・福祉サービスが限られた島での生活が難しくなれば、島を出て医療介護環境の整った本土や隣の伊豆大島などに行かなければなりません。住み慣れた場所で元気で暮らしていけるように、予防や早い段階でリハビリをすることが大切だと感じていています。
また、病院では理学療法士らと毎日多くの時間リハビリをしていますが、島では毎日するわけではありません。そのため、自宅で出来る自主トレーニングやセルフケアなどを取り入れてもらうこと、介入できるリハビリテーションの時間に「リハビリをすることは意味があることだ」と実感してもらい、継続してもらうことが大切だと考えています。病院に戻った時にも、こういったことを意識してリハビリをしないとなと改めて思いました。

––– 病院にいる時よりも「生活」の部分に視点が行きやすいと思いますが、利用者さんの生活を見たり聞いたりして新しく気づいたことはありますか。
やはり、生活環境が健康に与える影響は大きいと感じています。利島は山が大部分を占めていることもあり、すごく坂が多いです。そのため、デイサービス内や内地などの整備された平地であれば問題なく歩けるのですが、自宅に行くまでに坂があるとしんどくなってしまうということがあります。
家の中や駐車場くらいの短い距離ならいいのですが、一旦道に出てしまうと坂の傾斜が強いため、歩行器がかえって歩行の邪魔になってしまったり、車椅子を押すことが難しいなど、“福祉用具が使えない”という問題があります。
横浜も坂が多いので、転倒の危険性も考え、患者さんにはなるべく平地を歩くように生活を工夫できないか色々と解決策を提案していましたが、ここではそれが通じません。このように、福祉用具が使えない中で生活をしなくてはいけないというのは、大きな違いだと思います。


––– 福祉用具が使えない方たちは、どのように移動してるのですか。
歩行で疲れてしまう方は、基本的に家にいることが多いかもしれません。集落は小さいので、私だと歩いて10〜15分くらいで端まで移動できますが、やはり坂がきついので車で移動される方が多いです。あとはデイサービスの送迎を利用することもあります。
こういった環境で生活を続けるためにもリハビリテーションは大きな役割があると考えます。

––– 暮らしを続けるためにリハビリテーションが大切になってくると。医療や介護について抱えてる問題点はありますか。
“苦しいな”、“痛いな”と思った時に、すぐに病院へ行って検査がしっかりできる環境がないところですね。島から出ていかないといけないので。小さな島で全てを揃えることは難しいと思いますが…
また、問題点という訳ではないですが、利島に住む方は、すごく頑張りすぎちゃう方が多くて。
例えば「筋トレをしてください」というと、“通常はやりたくない”、“続かない”ということも多いと思います。ですが、利島の方はとても向上心が高く、さらに「歩けなくなったら島から出なきゃいけない」ということが分かってるからこそ、やりすぎてしまうこともあります。いい面もあるのですが、疲労が溜まっている時にもやりすぎたり、血圧が高い方が頑張って動いてしまう。
なので、セルフコントロールができるように、本人と話しながら健康に関する知識を持ってもらい、一緒に経過を辿っていくことが必要になってくると思います。今、こういったことができるように、介護士さんも含めて勉強会を開いています。

––– 利島に限らず、離島において医療・介護・福祉の面でこういうことが今後必要だろうなと感じることはありますか。
島にいる医療従事者としては、他の島など、同じような環境で、どのような医療・介護などをしているのか情報共有をして、蜜なコミュニケーションをとっていく必要があると思います。お互いのいいところを取り入れて、生活をよりよくできるかなと思います。
また、島を出て本土や大島の施設に入った場合に、島に残った家族や友人とのコミュニケーションが取りづらいところは改善が必要だと思います。島にいる高齢の方はスマートフォンなどの通信機器を十分に使えない、島を出る体力がないなどの理由から、島外の方とあまりコミュニケーションがとれていないようです。島を出た方も、長年生活してきた場所ではないところで生活することになるので、不安や寂しさを感じると思います。

––– 最後に、今後の意気込みを教えてください。
病院では、認知症の方のリハビリをしたり、排泄のリハビリやお風呂の介助などもしてきました。そういった日常のデリケートな部分は、“女性同士だからこそ相談しやすい”というところもあると思うので、私なりに支援をしていきたいと思っています。
また、まだ「自分にはリハビリはいらないよ」という方もいらっしゃるので、そういった方に少しでもリハビリの大切さについて知っていただけるように活動したいと思います。

 

離島でのリハビリの様子をnoteで公開中

前任の塚本さんのレポート動画(世田谷記念病院)

〈関連リンク〉
利島村社会福祉協議会 –  https://toshimamura-csw.main.jp/
〈記事内写真提供〉利島村社会福祉協議会 / 萩原 真梨奈

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