人工関節手術の最大の目的は”除痛”ですが、術前にひざや股関節周りの筋肉が弱くなっていたり、硬く縮んでいたりする場合は、関節の動きはすぐには改善しません。
一方で、術前からリハビリテーション(以下、リハビリ)をして体力や筋力をつけ、柔軟性を高めておくことは術後の早い回復につながります。
「リハビリ」と聞くと術後に行うイメージが強いかと思いますが、術前から行い手術を少しでも良い状態で迎えましょう。
整形外科を受診して手術の日程が決まると、手術日の1ヵ月から2週間ほど前にさまざまな検査をしたり、医師から具体的な説明を受けたりします。それらと同じ日にリハビリ科外来において、理学療法士による術前リハビリの説明の時間を設けています。
お身体の状態や歩行能力、ご自宅の環境などを聴取させていただきながら、その人個人に合わせた簡単な運動を指導します。また、合併症予防のポイントや術後リハビリの大まかな流れ、退院後の生活についてもイメージしやすいようパンフレットを用いて説明します。
人工関節手術の前には、弱くなった筋肉を鍛えるトレーニングや硬くなった筋肉を伸ばすストレッチなどを指導します。
■ 膝の手術(人工膝関節全置換術、人工膝関節単顆置換術)を予定している患者さん
膝周りやお尻の筋肉が弱くなっている方や、ひざ裏の筋肉が硬くなりまっすぐ伸ばせない方が多く見いらっしゃいます。そのため、大腿四頭筋(ひざを伸ばす筋肉)や大臀筋(お尻の筋肉)などを鍛えるトレーニング、ハムストリングス(ももの裏の筋肉)、下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)などを伸ばすストレッチなどを指導します。
例)
※回数や時間は身体の状態をみて判断します。痛みがある場合は無理をしないようにしましょう。
■ 股関節の手術(人工股関節全置換術)を予定している患者さん
お尻周りや付け根の筋肉が弱くなっている方や、股関節が硬くなっている方が多くいらっしゃいます。
そのため、中臀筋(足を横に開く筋肉)や大臀筋(お尻の筋肉)などを鍛えるトレーニングや、内転筋(足を閉じる筋肉)や腸腰筋(足を持ち上げる筋肉)などを伸ばすストレッチなどを指導します。
例)
※回数や時間は身体の状態をみて判断します。痛みがある場合は無理をしないようにしましょう。
「なかなか出来ないよ!」という方にオススメな体操は、かかとだけ足踏み体操です。
貧乏ゆすりをするイメージで、座ったまま出来る体操です。
テレビを見ながら、新聞を読みながら、スマホを見ながらなど、何かをしながらできて痛みが出にくい体操なので、是非生活の中で取り入れてみてください。
いずれの体操も基本的には手術をするまでの間にご自身で行っていただくものですが、「ひとりでは出来ない!」という方は外来リハビリへの通院も可能です。
また、手術を前に不安なことや分からないことがある場合も、遠慮なくご相談ください。
理学療法士 井上